おそらく実話をベースに書かれている。
本書はヒカルという女性が子ども時代の両親との体験を新聞やラジオの相談コーナーへ投稿するという体で進行する(そのため「相談小説」と銘打っている)。
この本に登場するヒカルの父親・辰造のような人間は確かに一定数存在する。
世間の大部分の人間にとっては理解不能な行動原理と思考様式を持っている。ヒドく偏っている。
そして、相談者ヒカルの両親ほど偏っていない人間はもっといる。
そんな人間の子どもとなったら、その子自身もどこかしら偏りをもった人間になる可能性が高いのではないか。
それが虐待は連鎖する理由だと考える。運や本人の努力によりその環境を脱出ことができれば良いが、そうならないときは世の中全体の不幸の量が増えるのだろう。
このような環境にある子どものすべてを救うことは残念だが不可能だろう。
家庭の中で起きていることは他人はわからない。
だが、啓蒙をあきらめなければ、そのような子どもにとってのチャンスが増えるのではないか。毎年のように児童虐待が原因でなくなる子どものことが報道されるが、こんごそのようなニュースを見聞きする機会が減ることを祈る。